鍼灸、健康相談・病気やケガ、身体のことなど、日々の疑問や何故などを考えます。

Q、肺が心配で背部夾脊穴の刺鍼に自信がありません。どうしたらうまく打てますか?

背部の刺鍼が苦手というのは、①初心者の方②浅鍼だった方が深鍼をするようになった、どちらかが推測されます。

もともと深部の刺鍼をやっている人は、解剖や刺鍼深度、刺鍼方向、刺鍼事故などを学ばれていると思いますので、どの場所でどの程度刺鍼すれば危険かというのを学びます。一方、表面の虚実やツボをターゲットにしている場合、刺鍼深度は5mm~10mmくらいと思いますので、筋肉や脂肪の少ない人以外は、背部であっても気にすることなく刺鍼ができたのではないでしょうか。
また、刺鍼スタイルが単刺メインの方は、深く刺鍼した場合でも一瞬で引き抜けば、肺のダメージが少なく気胸にいたらないということも考えられます。

背部夾脊穴の位置は、脊椎正中から外方に、5分と1寸といわれ、文献により違いがあります。

5分=1.5cm 1寸=3cm 

体の大きさ、ターゲットの違いで、多少の誤差があったのだと思います。

『肘後備急方』で、「脊椎を去ること各1寸」。こちらは、華佗がコレラの患者に対して、灸を百壮して治したと書かれています。
『三国志・魏志・華佗』によると、華佗の弟子が「鍼を背中に1寸~2寸刺鍼と記しています。3cm~6cmの深さに刺入するとなると、5分ですと早くに骨にあたり、これらの深さに刺入できません。但し、どういった体型の人にやったかは書かれていないので、判断は難しいところです。

国内に目を向けると、平安時代に書かれた『医心方」の華佗鍼灸経に、「諸槌は、脊を挟んで相去ること1寸なり」と書かれています。相去ることとあるので、左右の夾脊穴同士の間が1寸で、正中から5分と考えられます。

2003年に中国で出版された「夾脊穴臨床應用」では、夾脊穴の位置を5分から1寸の範囲内としています。その中でも、あてる場所によって違うことがわかります。

骨中=5分、肉中=1寸

簡単に言うと、骨に当てるか、筋肉に当てるかということになります。

なので、不安があるようでしたら、骨に確実に当たる5分から始めてみるのがいいのではないでしょうか。椎体に鍼先を当てていれば、気胸の心配はないですよ。


【参考文献】
張仁 (2010) 『早わかり 経外穴110選』 源草社
李鼎 (2000) 『鍼灸学釈難』 源草社
余明哲 (2003) 『夾脊穴臨床應用』 東大書公司
代田文志 (1940) 『鍼灸治療基礎学』 医道の日本社
北村清一郎 編 (1998) 『鍼灸師・柔道整復師のための局所解剖カラーアトラス』 南江堂

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